東京都行政資料集録

序
「むかしの百年は現代の十年である。」などとよく言われるが、最近の世相は自然科学部門の驚異的発達とともに、法律・経済・社会等の分野においてもそのうつりかわりはめまぐるしい。
　都という一つの地方公共団体にかぎつてみてもその例外ではありえない。このような環境の中にあつて、行政上そのときそのときに即応した貴重な資料がそれぞれの部課において次から次へと作られてはいるが、刊行されないか、あるいは刊行されてもあるものは関係部課に知られないまま利用されずに終つている。そしてそれも漸次うずもれて滅失していくことであろう。また今にして記録にとどめておかなければ将来分からなくなつてしまうものも少なくないのではなかろうか。
　われわれはかねてからこのような傾向のあることを憂え、座右に置いてすぐ役に立つ資料集を企画していたが、今回その趣旨に添つて本書を刊行することにした。
　この資料集は、原則として昭和31年または昭和31年度間の事実を主とし、都行政上有用な、または記録すべき資料を集めたものであるが、その範囲は集録すべきものの九牛の一毛にすぎない。それは初めての試みでもあり、またもろもろの制約をうけたためにほかならない。今後毎年刊行していく予定であるが、大方の御批判・御指導をお願いして、より充実したものにしたいと考えている。