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江戸幕府では業務上・学問上の必要性に応じて、実に様々な編さん物を作成していました。中世段階では武家政権による編さん事業は盛んに行われていないことから、長期政権による平和の実現と学問の進歩、幕臣の官僚化や学者の登用がもたらした江戸幕府特有の事業であるといえます。これらの編さん物は現在に伝わるものが多く、当館所蔵の江戸明治期史料にも「御府内備考(ごふないびこう)」や「御府内沿革図書(ごふないえんかくずしょ)」(以下、「沿革図書」という)が江戸幕府から引き継がれています。
編さん(編纂)とは「纂(あつ)めて編(あ)む」と書くとおり、材料となる情報や資料を収集するところから始まります。例えば、先述の「御府内備考」編さんにあたっては、基礎資料として江戸の町名主や寺社に提出させた「町方書上」「寺社書上」があり、これらは現在国立国会図書館に所蔵されています。一方、「沿革図書」については編さん過程で作成された史料は体系的に残っていませんが、当館の「荏原地域文書」(全805点)の中にはその過程を伝える史料がいくつか残されています。「荏原地域文書」とは、馬込領谷山(ややま)村の名主・海老沢家旧蔵の文書が大部分を占める、当館では唯一の地方(じかた)史料群です。谷山村は現在の五反田駅西側一帯と立正大学品川キャンパス周辺の二か所に分かれて存在していました。
今回はこの「荏原地域文書」の中から、「沿革図書」編さんにあたって村方で村内を調査し、作成・提出された「弘化二年八月 御府内御沿革ニ付取調書上帳」(以下、本史料という)を読んでいきます。

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【資料】
荏原地域文書「弘化二年八月 御府内御沿革ニ付取調書上帳」
請求番号:荏原―328



