史料の解読と読み下し例~江戸の人相書

(史料出典:『撰要永久録 御触事之部』第十五)

【史料】

人相書_前半
人相書_後半

解読文

   人相書之事
                  十右衛門事
                    浜嶋庄兵衛
一 せひ五尺八九寸程 小袖鯨さし三尺九寸程
一 歳弐拾九歳    見掛三拾壱弐歳ニ相見候
一 月額濃引疵壱寸五分程
一 色白歯並常之通   一 鼻筋通り
一 目中細ク      一 皃おも長なる方
一 ゑり右之方常かたき罷在候
一 ひん中ひん 中少しそり元ゆひ十程まき
一 逃去り候節着用之品
    こはくひんろうしわた入小袖
     但紋所丸之内橘
    下単物萌黄紬 紋所同断
    同白郡内ちばん
  (中略)
一 鼻紙袋萌黄羅紗うら金入り
一 印籠  但鳥のまき絵
 右之通悪党仲間ニ而者異名日本左衛門申候其身ハ曾て
 名乗不申候
 右之通之もの於有之其所々ニ留置御料御代官私領ハ
 領主地頭申出夫より江戸京大坂向寄奉行所へ可申達候尤
 見及聞及候ハヽ其段可申出候若隠置後日脇より相知候ハヽ可為
 曲事候
  寅十月
 右之趣可被相触候

読み下し文

   人相書きの事
                  十右衛門事
                    浜嶋庄兵衛
一、せひ(背)五尺八九寸程 小袖鯨さし三尺九寸程
一、歳弐拾九歳    見掛け三拾壱弐歳に相見え候
一、月額(さかやき)濃引疵壱寸五分程
一、色白、歯並び常の通り  一、鼻筋通り
一、目中細ク     一、皃おも長(面長)なる方
一、えり右の方え常かたき(傾き)罷りあり候
一、ひん(鬢)中ひん 中少しそり、元結十ヲ程まき
一、逃去り候節着用の品
    こはく(琥珀)ひんろうし(檳榔子)わた(綿)入小袖
     但紋所丸の内橘
    下に単物萌黄紬、紋所同断
    同白郡内ちばん(襦袢)
  (中略)
一、鼻紙袋、萌黄羅紗(らしゃ)うら金入り
一、印籠  但鳥のまき(蒔)絵
 右の通り悪党仲間にては異名日本左衛門と申し候、其の身は曾て
 名乗り申さず候
 右の通りのものこれ有るに於いては其の所々に留め置き、御料は御代官、私領は
 領主地頭え申し出、それより江戸京大坂向寄(もより)奉行所へ申し達すべく候、尤
 見及び聞き及び候わば其の段申し出づべく候、若し隠し置き、後日脇より相知れ候わば
 曲事たるべく候
  寅十月
 右の趣相触れらるべく候

語句説明

  • 月額=さかやき  通常月代と書く。江戸時代、成人の男性が額から頭上にかけて髪を剃ること。またその剃った部分のこと。
  • ひん=鬢=びん  頭の左右側面、耳際の髪。
  • こはく=琥珀  絹織物の一種である琥珀織のこと。緯糸(よこいと)の方向に低い畦がある平織物で、帯・袴地等に多く用いられた。
  • ひんろうし=檳榔子=びんろうじ  ヤシ科の植物檳榔樹の果実。薬用・染色用とする。ここでは檳榔子染めで染めた赤みを帯びた暗黒色のこと。
  • ちばん=襦袢=じゅばん
  • 羅紗=らしゃ  紡毛を密に織って起毛させた厚地の毛織物。

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