都レンジャーニュース(令和4年度)

2023年2月25日(父島レンジャー 藤澤)

都レンジャー工務店

  私たち都レンジャーは東京都の園地・歩道施設の管理をしています。普段点検を行う中でベンチが壊れたら木で補強したり、倒木で道をふさがれたときはチェーンソーなどで処理をしたり、山道のぬかるみがひどい時は木や石を使って水を流すように排水整備をしたりなど、その作業は多岐に及びます。それらの作業をするためには様々な道具が必要で、道具を機能的に整頓できるよう工夫をしています。今回は父島の都レンジャー工務店(手作りのものたち)を紹介したいと思います。
 例えば都レンジャーが普段使っている車"レンジャーカー"には、毎回の巡視ですぐに使いそうな高枝鋸や電動ドライバー、ほうき、スコップなどの荷物を載せており、それらを効率よく載せるために車の上部に長物を取り付ける工作をしています。道具の倉庫では、すぐに使用したいものが取り出しやすいように専用の棚を作り、整理整頓できるようにしました。
 他にも都レンジャーが手作りしたものがいくつかあります。小笠原では、山を歩いた後に靴底を洗浄して外来の生物などを拡散しないようにしており、私たちは午前と午後で毎日2回は靴底を洗うため、簡単に洗浄ができるように不要な鉄パイプと木で作った靴洗浄器を使っています。洗った靴を干すのにも同じように作った干し場で干しています。
 島という環境では欲しいものをピンポイントで手に入れにくいことがあるため、不要になったものなどを使って作れるものは自分たちで作っています。これからも都レンジャーの日々の活動がより効率的になるように楽しく試行錯誤してアップデートしていこうと思います。

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2023年2月10日(父島レンジャー 田谷)

都レンジャーの伝える活動

 小笠原の希少な動植物や特異な景観を守るため、都レンジャーは自然公園の利用マナーやルールについて普及啓発を行っています。普及啓発というと硬い印象ですが、「多くの人に、小笠原の自然を適切に安全に楽しんでもらうために、小笠原の自然の希少さ、面白さ、魅力を知ってもらいたい!」ということで、伝える活動にも力を入れています。伝える方法は様々です。巡視中のお声がけや利用者の方からの質問にお答えすることも1つ。この都レンジャーニュースをはじめ、ツイッターやインスタグラムなどインターネットを活用して日頃から自然情報や都レンジャーの活動について発信をしています。さらに地元の子どもたちへのレクチャーや出前授業も実施しています。コロナ禍でしばらく実施できていなかった、内地の小学校での出前授業も今年度から再開しています。
 昨年10月31日~11月6日には都レンジャーや小笠原支庁の職員が日頃撮影した写真を都庁第一庁舎にて展示していただきました。そして、第2回の展示を2月18日~24日に行います。題して「小笠原 Photo Collection」3月4日、5日には夢の島熱帯植物館のイベント「都レンジャーと行く!小笠原諸島ってどんな島?」に小笠原から都レンジャー2名が講師として伺います!!さらに父島・母島と中継を繋いで現地の植物のリアルな様子をお伝えする予定です。お時間があれば足を運んでいただければ幸いです。

夢の島熱帯植物館のイベント「都レンジャーと行く!小笠原諸島ってどんな島?」のリンク先↓

https://www.yumenoshima.jp/botanicalhall/event/archive/1515

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2022年11月2日(母島レンジャー 竹中)

施設の応急補修

 歩道巡視の際に「うわ~っ!」と驚きの声を上げる事がごく稀にある。一番よく出くわすのが倒木だ。胸高での直径が20cmくらいまでだったらさほど驚かないが、40cmを超えるような大木が倒れていると「うわ~っ!」と叫んでしまう。3年前の台風21号の時は道がわからないくらい木が倒れていて、「うわ~っ!」のオンパレードだった事を思い出す。また、歩道施設の損傷もビックリさせられる時がある。先日の事例は休憩舎の座板の脱落だ。実は隣接した板が腐りかけていたので、アカギの伐採木を簡易製材し現場に設置していたのだが、まさか隣がこんなに早く脱落するとは!下側を確認したところ、座板を支えている木材もぐらついているのだ。再びアカギの伐採木を製材する事も考えたが、付近に良い伐採木が転がっていなかったため、今回は角材を加工して現場に設置することにした。角材を採寸通りに加工後、防腐塗料を4回重ね塗りし現場に設置した。また、座板を支えている角材のぐらつきを防ぐためL字金具で全体を補強した。現場は乳房山西側ルート山頂手前の休憩舎なので資材運搬が一苦労だったが、無事座板の応急補修が終了し安堵した。とかく派手な仕事が多い印象の小笠原の都レンジャーだが、実情は地道なコツコツした仕事の積み重ねの日々なのである。歩道を歩きやすく改良したり、倒木やかかり枝の処理、歩道施設の補修、草刈りや外来種の駆除など。その中で新たな問題が発生し、積極的にチャレンジして乗り越えられた時は何物にも代えがたい充実感が得られる。これからも、「うわ~っ!」を乗り越えていくのだ!

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2022年9月26日(父島レンジャー 右田)

人知れず消えていく植物たち

 父島レンジャーは今年も※シードバンク事業のため、依頼された植物の結実状況をモニタリングしています。指定された種の中には歩道上で見られない植物が含まれているため、林内を探し回ることも頻繁にあります。場所や地形を考慮しつつ1から探すこともありますが、頼りになるのは過去から現在まで都レンジャー達が集めてきた情報です。
かつて記録された植物の位置情報を辿っていくとき、嬉しいときと悲しいときがあります。嬉しいときは植物がその場所で元気に生育して種子をつけているとき。悲しいときは位置情報に記されていた種が現地で消失していたときです。くまなく探して「ない」と判断したときほど残念な瞬間はありません。例えば先日、オオミトベラを探したときのことでした。10年前にはあったはずの株が今では数本なくなっていることがわかりました。オオミトベラは現存している株で結実しているものが少なく、私たちは行く末を案じています。
植物によってはオオミトベラのように種子を付けないうちに株が消滅しているケースをたびたび目にします。10年後にはさらに数を減らしていないことを祈るばかりです。ただし、新たに別の場所で見つかる可能性もあるため、これからも私たちは注意深く探していくつもりです。

※R3年度都レンジャーニュース「種に注目!」にシードバンク事業について詳しく書いています。よろしければそちらもご覧ください。

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写真:シードバンク事業による種子の確認の様子 写真:オオミトベラの結実

2022年9月16日(母島レンジャー 足立)

北港ツヤオオズアリ対策

 母島の北部にある現在は使われていない小さな港のことを「北港(きたこう)」と呼びます。その北港周辺で2015年に初めて、侵略的外来生物である「ツヤオオズアリ」が確認されました。この外来アリは、世界の侵略的外来種ワースト100にリストされている種で、繁殖力が高く攻撃的な性質を持つとされています。小笠原では固有陸産貝類やその他小昆虫に多大な影響があるとされ、行政を主体とした駆除が各所で進められています。問題のツヤオオズアリが初確認されてからは、速やかに設置型ベイト剤による駆除と液剤散布による駆除の双方による徹底的な対策を行ってきました。しかし、厄介なことに対策直後には見られなくなるものの、1年ほど経つと再び現れるという散発的な出現・消失を繰り返すことになります。それでも、根気よく設置型のベイト剤による駆除を続けてきた結果、令和3年度(2021年)では前回の出現・駆除より丸2年が経ち、根絶へのゴールラインが見えてきたのです!
このことを受け、設置型ベイト剤による駆除は役目を終えて、定期的なモニタリングのみ継続して行うことになりました。それから約1年、自然の身にゆだねる形にした今でも、幸いなことにかのツヤオオズアリは姿を現してはいません。ホッと一息つきたいところではありますが、残念ながらツヤオオズアリは島内各所に未だ根強く定着していて、完全な駆除が行われたとは言えません。けれども、小さい範囲ではあるもののエリア的な根絶が行われたことは、小笠原の外来生物対策に従事する方々への一つの吉報になるのではないでしょうか

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2022年8月17日(父島レンジャー 井上)

父島・母島に残された自然の価値

 じつは、小笠原の世界自然遺産として評価される自然の多くは、一般人が行くことのできない無人島に多く残っており、さらに、地域住民や観光客が見に行くことのできる希少動植物は父島や母島であってもそのごく一部に限られています。身近なようで身近でないため、希少動植物の保全事業に対し、特に地域住民の関心を得にくい実情があります。都レンジャーは、誰でも利用することのできる歩道や園地の管理を通じて、会いに行ける身近な自然の価値を高めていき、多くの人に自然への関心を持ってもらいたいと思っています。
歩道脇であっても小笠原でしかみることのできない固有植物に会えることができますし、小笠原らしい可憐な花を咲かす植物を観察することができます。外来種の影響で父島では激減している昼行性の昆虫も、種類は少なく、会える時期も限られますが、園地内で見ることができます。
会いに行ける身近な自然をきっかけに、小笠原の自然へ関心をもち、保全活動への理解に少しでもつながると嬉しいです

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2022年5月19日(母島レンジャー 宮川)

小笠原にも季節はある

 東京から南へ1000㎞の小笠原は常夏!というイメージがあるかもしれません。実際、植物は一年中緑の葉っぱを元気につけているものがほとんどです(例外は台風の後で、風で舞った海水をかぶった葉っぱが塩枯れしてまるで内地の冬山のように寒々しい様子になります)。しかし、暖かいなりに季節はあります。まあ、春・夏・秋・冬というよりも夏・夏・夏・冬という感じですが...。そしてこれからの6,7月は出会える花の多い季節です。年によって多少のずれはありますが、6月は小笠原村の花でもある「ムニンヒメツバキ」が島中で咲き乱れ、母島の乳房山や石門では母島固有種の「ハハジマノボタン」、7月は希少な蘭の一種「オガサワラシコウラン」など、この時期にここでしか見られない花が咲きます。父島では「ムニンノボタン」や「シマムラサキ」なども花の時期ですね。花を探して山を歩いて、暑くなったら海にドボン!も気持ちいい季節です。いよいよ夏本番を迎える小笠原に遊びに来てください。レンジャーは皆さんが安心して楽しめるように日々島内を巡視しています!

写真 ムニンヒメツバキ、ハハジマノボタン、オガサワラシコウラン

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2022年5月16日(父島レンジャー 熊本)

庁舎内写真展示

 小笠原支庁は昭和61年5月に建築された築36年目の建物です。1階は中廊下で窓がないため日中も暗い印象。庁舎環境を少しでも明るくすること、都レンジャーの活動を多くの方に知ってもらうことを目的に2020年11月から庁舎内にて写真展示を行っています。
日々、フィールドで活動するレンジャーが撮る写真はマニアックなモノも多いのですが、タイトルとキャプションも一緒に見ていただくと、とても興味深く面白いと思います。庁舎内1階入口から2階産業課前までに16枚の写真を展示していますので、小笠原支庁にお越しの際には廊下に展示されている写真もご覧になってください。知らなかった世界を知ることできるかも?!

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2022年4月13日(母島レンジャー 向)

都レンジャーをサポートする企業

 都レンジャーは、都が管理している歩道の整備、学校のレクチャー、違法行為の監視是正、船の入出港時の立会による外来種の侵入防止など多様な業務を行っています。その中で業務の中心になっているのは、都が管理している歩道の整備です。この業務は日々、歩道や園地などを巡視し、歩道上の利用者の安全のために頭上にある枯れ枝や通行の支障になるような倒木を手鋸やチェーンソー、高枝鋸など様々な道具を駆使しながら、歩道の安全を確保します。そのため、都レンジャーの活動は、野外が多く、装備品も消耗が激しいのが特徴です。今回は、そんな現場を支えてくれている企業にスポットを当てたいと思います。実は都レンジャーは巡視に必要な靴を、協定により株式会社丸紅フットウェア様より提供してもらっています。
 小笠原では、父島~母島間だけでなく、母島内でも動植物の移動を禁止しています。そのため、レンジャーは場所ごとに使う靴を分け(石門、属島、立会、歩道巡視など)、さらに使用後は、徹底した靴底洗浄を行うことで、動植物を拡散しないように努めています。こういった洗浄は靴にとっては非常に大きなダメージを与えてしまうため、日々の巡視での摩耗に加え、靴の劣化がとても激しくなってしまいます。
 こういったことから、これらの提供はレンジャーの活動の支えの一つとなっており、その分使用状況による靴の劣化や使用中の使用感、改善点などをモニターとして細かく報告しています。

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