小笠原の自然

東京都の取組 - 希少種の保全

  小笠原諸島内に生息・生育する希少な動植物について、保全事業を行っています。

 ◇国内希少野生動植物種...絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(第4条第3項)に
 基づき、その個体が国内に生息し又は生育する絶滅のおそれのある野生動植物の種であって、政令で定
 めるもの

 ◇天然記念物...文化財保護法に基づき、動物、植物及び地質鉱物で我が国にとって学術上価値の高いも
 ののうち、重要なもの(そのうち特に重要なものを「特別天然記念物」に指定)

 ◇レッドリスト...絶滅のおそれのある野生生物の種(以下、「絶滅危惧種」)のリストのことで、個々
 の種の絶滅の危険度を評価し、ランク付けをしている
  国際的には国際自然保護連合(IUCN)が作成
  国内では環境省、地方公共団体、NGOなどが作成
  【絶滅危惧種のランク(環境省レッドリスト2020)】
  絶滅危惧Ⅰ類...絶滅の危機に瀕している種
  絶滅危惧ⅠA類...ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
  絶滅危惧ⅠB類...ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
  絶滅危惧Ⅱ類...絶滅の危険が増大している種



種名
学名
国内希少
野生動物種
天然記念物 絶滅危惧種

オガサワラシジミ
Celastrina
ogasawaraensis

ⅠA
アカガシラカラスバト
Columba janthina nitens
ⅠA
アホウドリ
Phoebastria albatrus
〇※
オガサワラカワラヒワ
Chloris sinica kittlitzi
ⅠA
オガサワラオオコウモリ
Pteropus pselaphon
ⅠB
オガサワラグワ
Morus boninensis
ⅠA

      ※特別天然記念物

オガサワラシジミ

  オガサワラシジミは小笠原諸島だけに生息する希少昆虫です。
 父島では1990年代まで確認されたほか弟島など複数の島でも確認の記録がありますが、近年では母島
 のみでの確認となっています。しかし、現在では母島でも確認がされていません。このような生息状況
 になったのは、外来生物のグリーンアノールによる捕食、台風による被害や開発による影響、アカギ、
 シマグワ等の外来植物の侵入等による在来植生への影響、愛好家による違法捕獲等の影響を受けてきた
 ためと考えられ、本種は絶滅に瀕しているチョウ類となっています。
  都立多摩動物公園及び環境省新宿御苑では、生息域外における累代飼育に成功していましたが、令和
 2年8月25日に全ての個体の繁殖途絶が確認されました。
  唯一の野生生息地である母島では、種の存続のために餌植物となるオオバシマムラサキの保全、育成
 管理をするなどの活動を実施しており、令和2年度からは環境省小笠原保護官事務所と小笠原支庁で調
 査計画を作成し、生息状況の調査や保全活動を実施しています。

  • 65_p01.jpgオガサワラシジミ
  • 65_p02.jpgオオバシマムラサキの育成管理

アカガシラカラスバト

  アカガシラカラスバトは小笠原諸島だけに生息する固有亜種です。元々の個体数が少ない上に、アカ
 ギなどの外来樹木の繁茂や台風の影響により餌となる木の実が減少、野生化したネコ(ノネコ)による
 捕食などで平成18年には指定野生個体数が40羽程度にまで激減しました。絶滅の危機を回避するため、
 行政機関やNPO法人など多くの団体が保護に取り組んでいます。
  ノネコ対策や食餌植物の育成などの生息環境の整備により、アカガシラカラスバトの目撃数は増加し、
 以前までは見られなかった住宅地でも姿が見られるようになりました。また、都立動物園では平成12年
 度から生息域外保全を開始し、飼育下での自然繁殖に成功しています。

  • 65_p03.jpgアカガシラカラスバト
  • 65_p04.jpg住宅地での目撃状況

  平成15年4月にはアカガシラカラスバトの生育環境に適した森林の保全・整備を行い、生息域への立入
 りルールの確立を図るために、林野庁が父島の中央山東平の保護林内に「アカガシラカラスバトサンクチ
 ュアリー」を設定しました。


  ・アカガシラカラスバトサンクチュアリー(林野庁)外部リンク

アホウドリ

  アホウドリ(別名:オキノタユウ)は特別天然記念物です。かつて伊豆諸島および小笠原諸島以西の島
 しょで大集団をなして繁殖していましたが、乱獲によって個体数が減少し、一時は絶滅したものと考えら
 れていました。
  その後、昭和20年代に伊豆諸島鳥島(以下「伊豆鳥島」という。)で再発見され、平成5年から開始さ
 れた保護増殖事業の結果、本種の推定個体数は約6,500羽(令和2年度調査)まで回復しています。
  一方で、伊豆鳥島における噴火の可能性を考慮し、小笠原諸島において新たな繁殖地の形成を目指して
 います。聟島では環境省が中心となって平成20~24年にかけて伊豆諸島燕崎からヘリコプターで聟島への
 雛の移動(計70羽)、人工飼育を実施し、計69羽が巣立ち、平成23年より巣立ち個体の帰還が確認され、
 平成26年に初めて媒島で繁殖成功しています。これまで定期的なモニタリングとデコイや音声による誘引
 事業を実施してきました(平成18年度から平成23年度まで環境省、平成24年度から令和3年度まで東京
 都により実施)。聟島列島に定着した移送個体は69羽中3羽程度で、聟島列島に飛来するアホウドリは、
 約10羽程度(令和3年度調査)です。
  これまでの取組の結果、着実に新たな繁殖形成へのステップを踏んでおり、令和4年には小笠原生まれ「
 アホウドリ」の繁殖が初めて確認され、移送世代の孫が誕生しています。
  また、聟島列島は、アホウドリのほか、クロアシアホウドリ、コアホウドリの繁殖地になっており、外
 来植物であるノヤギやネズミの駆除により、特にクロアシアホウドリの繁殖数が増加しています。地上に巣
 をつくるアホウドリ類にとってヤギやネズミによる影響が低減され、安心して繁殖ができる環境になった
 と考えられます。



  • 65_p05.jpg小笠原生まれ「アホウドリ」の初繁殖
  • 65_p06.jpg聟島アホウドリ飛来状況

オガサワラカワラヒワ

  オガサワラカワラヒワ(通称:オガヒワ)は、東アジアを中心に広く分布するスズメ目アトリ科カワラ
 ヒワの亜種として認識されていますが、近年、進化の過程で独自の特徴を持つようになったことが明らか
 となっています。本亜種はカワラヒワの他亜種と約106万年という古い時代に分岐したと推定されていま
 す。かつては小笠原諸島に広く生息が確認されていたものの、現在生息が確認されているのは母島、母島
 属島(母島列島個体群)及び南硫黄島(南硫黄島個体群)のみであり、現在の母島列島個体群の繁殖個体
 数は約100個体と絶滅の危険度が高い状況に置かれています。
  専門家、地域住民、民間団体や行政機関が連携して保護増殖事業に取り組んでおり、小笠原支庁は都立
 動物園と連携し、主に生息域外保全に取り組んでいます。令和3年9月には、母島島民から寄せられた飛来
 目撃情報などを基に母島で捕獲に成功し、飼育繁殖施設のある父島に移送、雌雄2ペア計4羽の飼育を開始
 しています。また、令和4年9月にも母島属島で捕獲に成功し、雌雄2ペア計4羽を追加で飼育しています。
  繁殖地の対策と連携して生息域外での増殖を実現し、生息域内の個体群の増強に貢献してい
 きます。

  • 65_p07.jpgオガサワラカワラヒワ
  • 65_p08.jpgオガサワラカワラヒワ初期飼育個体

オガサワラオオコウモリ

  オガサワラオオコウモリは、小笠原諸島唯一の固有哺乳類です。体長は19~35㎝程度、翼を広げると1
 ~1.5m程度になる大型の哺乳類で、主に果実や花、葉などを食べています。主に父島、母島、硫黄列島に
 生息していますが、最も個体数が多い父島でも推定400頭程度しか生息しておらず、絶滅が危惧されていま
 す。
  オガサワラオオコウモリの生態についてまだまだ知られていないことが多いため、GPSによる行動追跡調
 査や生息地の環境や利用している餌についての調査を実施しています。

  • 65_p09.JPG採餌中のオガサワラオオコウモリ
  • 65_p10.JPGオガサワラオオコウモリが食べたタコノキの実

オガサワラグワ

  オガサワラグワは、小笠原諸島の固有のクワ科の一種で、高さ20mにもなる巨木です。かつては小笠原
 諸島の湿性高木林の優占樹種でしたが、優れた材質であったため、明治初期の入植開始に各島で乱伐され、
 個体数が著しく減少しました。また、近年、外来種であるアカギやシマグワの分布拡大によって生育環境
 が悪化しており、絶滅が危惧されています。
  現在、自生株が残っている弟島、父島、母島のオガサワラグワ保全に関する取組が行われています。林
 野庁や東京都による生育状況調査や生息域内の環境改善(外来植物駆除等)、播種による苗木の育成など
 現地での取組に加え、研究施設において組織培養やクローン苗づくりの技術開発など生息域外保全に関す
 る取組が行われています。

  • 65_p11.JPG自生するオガサワラグワ(弟島)
  • 65_p12.JPG播種による苗づくり試験

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