平成16年度 所蔵資料展「都市をつくる~江戸のすがた 東京のかたち」内容紹介
◆ 終了しました ◆
- 会期:平成16年10月31日(日)~11月14日(日)
(11月4日は休館) - 時間:10:00~17:00
- 会場:都立中央図書館 4階 多目的ホール
- 観覧料:無料(東京文化財ウィーク参加事業)
昨年度、都立中央図書館・江戸東京博物館・東京都公文書館では3館合同講演会を開催し、竹内誠江戸東京博物館長の講演と、各館の利用ガイダンスを行いました。今年度は新たな試みとして、3館所蔵資料展を開催します。各館所蔵資料の中から、絵図・地図・錦絵・版本・刷物・公文書・図書・生活道具等を展示して、江戸・東京の都市の変貌を、江戸時代から昭和初期まで通観します。
Ⅰ 天下の城下町 江戸のすがた
伊能忠敬『江戸実測図』
文化13年(1816)閏8月から10月に至る測量をもとに、翌14年、幕府に上呈されたもので、6千分ノ1の縮尺を用いた御府内とその周辺にわたる詳細な実測図です。時に忠敬73歳。死の前年の完成でした。
正本は明治6年(1873)、皇居の炎上に際してすべて焼失し、伊能家から副本が貸与されていました(のち献上)。大正3年(1914)に開催される東京大正博覧会に向けて出展準備を進めていた東京市役所市史編纂室はこの貴重な絵図に着目し、模写図を作成しました。ところが東京帝国大学図書館に保管されていた伊能図副本も関東大震災による火災で焼失したことから、東京市作成の模写図は伊能忠敬晩年の測量成果である江戸実測図の内容を今に伝える貴重な資料となったのです。
今回の展示では、およそ360cm×400cmという巨大パネルを作成しました。伊能忠敬の偉業に触れていただければ幸いです。
『御府内沿革図書』
江戸幕府普請方(普請奉行配下で上水や道などの普請を担当した)において編纂された江戸の地誌。御府内及び府内場末近辺町々の時代的変遷を図と記述で詳細に表現しています。文化4年(1807)に調査が命じられ翌年開始されたもので、幕末の安政5年(1858)にようやく完成しました。
現在の東京の土地区画が江戸時代にどのように利用されていたかを探る際に、基本的な情報を提供してくれる貴重史料です。
Ⅱ 明治の東京―開化から市区改正へ
錦絵「御酒(ごしゅ)頂戴(ちょうだい)」
公文書「明治元年順立帳七」
明治元年、江戸城に滞在中の天皇から「江戸」の町民に対して御酒が下されました。為政者が将軍様から天子様に代わったことを町民に知らしめる象徴的な出来事でした。江戸は東京と改められ、近代都市東京が誕生します。順立帳には、鹿島清兵衛をはじめとする江戸の代表的な酒問屋がそれぞれどんな銘柄の酒をどのくらい調達したかが記されています。
煉瓦街建設に関するウォートルス建言・図面 (「明治五年 建築事務御用留 甲」)
「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉がありますが、明治の東京でも頻繁に大規模な火事がありました。明治5年(1872)2月26日、和田倉門内旧会津邸で発生した火事は、折からの烈風で大名小路(現在の新橋附近)へ飛び火、銀座一帯から築地にかけておよそ30万坪を焼き払いました。
これを契機に、東京府は市街地の不燃化を図るため、煉瓦建築を採用することとしました。今回の展示では煉瓦街建築を担った英国人トーマス・ウォートルス自筆の煉瓦施工法図面を紹介します。
Ⅲ 大東京こそわが住むところ
宅地分譲パンフレット
大正期に入ると、東京の人口は増加の一途をたどり、とりわけ市の周辺部で爆発的に増大します。
郊外電車網の整備とともに、この時期理想的な住宅環境を謳った郊外住宅が開発されるようになります。
今回、当館所蔵の内田祥三資料の中から、田園調布、国立、常盤台など、当時の珍しい分譲パンフレット類を多数展示します。
Ⅳ 関東大震災と震災復興
関東大震災時ポスター「汽車、汽船無賃で国へかへれます」
当時、ラジオ放送はまだ始まっておらず、新聞社も被災して、数社がわずかに焼け残っていたに過ぎませんでした。このため必要な情報を被災者に届ける手段は限られていました。その手段のひとつがポスターです。
今回展示するポスターは、地方出身者などで帰郷を希望する者については、無賃で汽車や船などに乗せるという措置を知らせるものです。
東京土地区画整理換地決定番地図 縮尺1/1200
関東大震災後の復興事業では、将来の災害に備えて道路の幅員拡大や空地・公共用地の確保のため、土地の所有者に対し、一定の減歩を強制する土地区画整理を施行しました。
この措置については賛否両論、大変な論争がありましたが、未曾有の惨事を引き起こした震災の直後ということもあり、計画どおり実行されました。
この区画整理は、東京の街区の基本プランとして引き継がれ、いわば今日の東京の原型を造った事業として重要な意義を持っています。
以上、当館所蔵資料を中心に見所の一端をご紹介してきましたが、このほか都立中央図書館・江戸東京博物館からも貴重な絵図、興味深い資料が数多く出展されます。
どうぞ奮ってご観覧くださいますよう、改めてお願い致します。