2 監理団体総点検基本指針
1 経営状況の点検
都では、平成9年度から、全国の自治体に先駆けて、団体に対する経営評価制度を実施した。
団体に対する経営評価制度は、「監理団体の経営状況を的確に把握し、これを評価することにより、団体の経営責任及び所管局の指導監督責任を明確にするとともに、団体の自律的経営を促進することを目的」
に導入したものである。
また、経営評価の効果として、第一に、団体にとって、自らの経営を見直す契機となること、第二に、都民にとって、評価結果の公表により、団体経営の透明性が確保され、開かれた都政の実現に資することが
できること、第三に、都にとって、団体の経営内容に即した適切な指導監督ができること、があげられる。
しかしながら、経営評価結果が団体の経営改善に十分結びついていないなどの問題点も認められる。
今後とも、経営評価制度の適切な運用と厳正な評価を通じて、団体の経営改善や団体に対する指導監督の適正化に努めていく必要がある。
基本指針1
【経営評価制度の見直し】
・経営評価結果が団体の経営改善に確実に反映される、実効性ある制度に見直す。
[現状と課題]
平成9年度から実施している経営評価は、今年度で3回目となる。評価方法については、毎年、評価精度の向上を図る観点から、所要の見直しを行ってきた。特に今年度からは、団体への関与の度合いなどからこれまで評価対象外としてきた協議団体についても新たに評価対象とした。これにより、全ての監理団体を対象とした評価制度となった。
しかし、この経営評価制度には、次のような問題点がある。
第一は、経営評価結果が団体の経営改善に十分に結びついていないことである。
第二は、指標そのものの妥当性や、指標相互の関連性が十分検証されていないことである。
第三は、個別の経営改善計画と整合性の取れた評価となっていないことである。
したがって、評価結果を団体経営改善に反映させる仕組みとなるよう見直すとともに、評価指標の妥当性や指標相互の関連性を整理する必要がある。
[取組の方向]
経営評価制度を、真に実効性あるものとするために、以下の事項について取り組む。
・総合評価の見直し(点数制等)
・他団体及び民間企業との比較による評価手法の検討
・評価指標のウエイト付け
・評価結果の役員報酬への反映
・評価結果に基づいた統廃合計画の検討
・出資者又は株主としての都の積極的な経営関与 など
〈参考〉平成11年度 東京都監理団体経営評価実施結果(概要)
*各団体の経営状況については別添「平成11年度東京都監理団体経営評価報告書」参照
○ 財 務
・事業収入(売上高)は、対前年度比7.8%増加した。公益法人は、44団体(うち2団体は前年度実績なし、1団体は自主事業収入なし。)中23団体の事業収入が同0.8%減少した。これは、主に都への財政的依存度が高い団体を中心に都の財政支出削減の影響を受け、事業収入が減少したことによるものである。株式会社は、対前年度比50.1%増加したが、これは主に東京都地下鉄建設(株)が12号線車庫等を約366億円で譲渡したことによるものである。
・総収入に占める都財政支出(補助・委託)の割合は29.1%であり、前年度に比べ4.4ポイント(8百万円)減少した。公益法人は34.8%であり、同2.1ポイント減少した。また、44団体中27団体が50%以上であり、依然として都への財政的依存度が高い。株式会社は11.4%であり、前年度に比べ8.0ポイント減少したが、23団体中19団体は50%未満であり、総じて財政的依存度は低い。
・株式会社23団体中15団体が累積損失を計上し、そのうち4団体が、既に債務超過、1団体が債務超過に陥るおそれがあり、株式会社の経営状況は、引き続き厳しいものとなっている。しかしながら、これら累積損失を計上している団体うち10団体が減価償却前利益を計上するなど、収益性の改善がみられる。
○事 業
・公の施設の管理運営については、江戸東京博物館の入館者数が対前年度比10%の増(132万人)となったが、文化会館等20の教育施設の個人利用者等が同9%の減となった。ビル賃貸業については、入居率が8年度以降大幅に改善され90%を超える水準となっているが、賃料は採算ベースでなく、厳しい経営状況である。また、多 摩都市モノレール(株)は立川北~上北台駅間を新規開業したが、乗車人員が当初見込みの約半分であり、同じく厳しい経営状況である。
・自主事業比率は逓増傾向にあり、過去5年間では最高の85.1%となった。これは、自主事業費の増加によるものではなく、受託事業費の大幅な減少によるものである。公益法人は過去5年間70%台で推移し、ほぼ横ばいとなっているが、株式会社は逓増傾向にあり、過去5年間で最高の96.2%となった。
○組 織
・団体の常勤役員(理事)数は7年度をピークに減少傾向にあり、11年度は、団体統廃合の実施などにより対前年度比8.0%減少し、162名となった。常勤職員数は、(社福)東京都社会福祉事業団の職員数増などにより、対前年度比18.5%増加し、9,547名となった。
常勤役員・職員の状況(単位:人、各年8月1日現在)
6年度 | 7年度 | 8年度 | 9年度 | 10年度 | 11年度 | |
常勤役員 |
197 | 202 | 198 | 187 | 176 | 162 |
常勤職員 | 7516 | 7788 | 7761 | 7832 | 8055 | 9547 |
内都派遣 | 3231 | 3166 | 3166 | 3134 | 3192 | 4585 |
内固有 | 2948 | 3105 | 3105 | 3141 | 3226 | 3290 |
内その他 | 1337 | 1490 | 1490 | 1557 | 1637 | 1672 |
注1:「固有」欄は、常勤嘱託職員を含まない。
注2:平成11年度経営評価の対象団体である64団体を基準としているため、各年度の実数とは異なる。
2 事業効果と財政負担の点検
監理団体は、都行政の代替・補完機能を担うことを主な設立目的としており、団体の全事業収入のうち、都からの委託費及び補助金等の占める割合は、平成10年度実績で約39%に上っている。
団体による事業遂行については、都では採用困難な民間の事業手法を導入したり、柔軟な人材活用を行うことによって、都が直接実施するよりも優れた事業効果をあげるとともに、都の財政負担を軽減することが期待されている。しかしながら、実際には、団体活用のメリットが明確にあらわれているとは言い難く、また、都の財政支出方法を含めて、団体の自律的経営へのインセンティブを高める工夫が十分とは言えない。
今、監理団体については、行政直営や純粋民間事業者への委託など他の事業遂行手段との比較衡量を行い、団体方式が公的財政負担が少なく効率的であることをあらかじめ検討した上で活用することが求められている。
このため、費用対効果の検証を十分行った上で、メリットが認められない事業については所要の見直しを行っていく必要がある。
基本指針2
【費用対効果の徹底】
・団体への事業委託及び補助に関しては、都が直接実施するよりもコストとサービスのメリットが出るよう見直す。
(1) 都から団体に委託又は補助している事業の効果と費用の検証
[現状と課題]
団体に対しては、都から様々な事業委託や補助などがなされており、その合計額は平成10年度決算(見込み)で約2,700億円に達し、これは団体全体の収入額の約39%を占めている。
しかし、これについては、次のような問題点がある。
第一に、事業コストについて、都が直接実施する場合と比べて、財政負担軽減の検証が不十分であることである。
第二は、サービスの質・量について、都民サービス向上効果の検証がなされていないことである。
したがって、団体が都から受託して実施している事業(受託事業)や、都から補助金を受けて実施している事業(補助事業)について、都が直接実施する場合等と比較して、都の財政負担が軽いか、提供されるサービスの質や量が優れているかなど、バリュー・フォー・マネーの観点から、コスト面、サービス面等における団体活用のメリットの有無を検証する。また、都民サービス向上の観点から、顧客満足度(CS)を重視した事業運営を行い、その結果を、事業の見直し等に反映さ せていく必要がある。
※バリュー・フォー・マネー(Value for Money)
一定の支払に対し、最も価値の高いサービスを提供するという考え方。
[取組の方向]
費用対効果を徹底するために、バリュー・フォー・マネーの観点から、以下の事項について取組
む。
・コスト面での費用対効果が明確となる会計方式の導入
・顧客満足度調査の導入(サービス面での費用対効果の明確化)
・十分な費用対効果が見込めない場合は、
1)事業の一部をアウトソーシングし、団体から他の事業者へ委託
2)事業全体を民間に委託
3)事業の廃止
・都事業と連結した事業評価(行政評価)の実施
・同業他社の経営手法との比較など、新たな経営効率化のための手法の導入 など
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