「新たな多摩のビジョン」

策定の趣旨・背景

 多摩地域では、現在400万人を超える人口が、今後減少に転じるとともに、高齢化の進展や大規模工場の撤退など、地域を取り巻く状況が大きく変化することが想定されます。このような状況変化に対応するには、都、多摩の市町村、多摩地域で活動する民間企業やNPOなど、地域に関わるあらゆる主体が一丸となって取り組むことが必要です。
 今回策定した『新たな多摩のビジョン』は、地域のあらゆる主体を対象に、おおむね2030年頃を念頭に入れた、多摩の進むべき方向性を明らかにいたしました。
 東京都といたしましては、このビジョンを踏まえ、多摩地域に関わるあらゆる主体が認識を共有し、それぞれ自発的・主体的に取組を進めていくことを期待します。

「新たな多摩のビジョン」の概要

【ビジョンを貫く考え方】

1 基本認識

「右肩上がりの成長・拡大」から、「活力ある都市の成熟・持続」への発想の転換

 これまで地域の未来図や将来像を描く際の基調となっていた社会全体の右肩上がりの成長や拡大という発想を見直し、それぞれの地域に存在する多様な特性を最大限活用し、活力ある都市としての成熟を目指し、それを持続させていく。

2 目指すべき姿

魅力にあふれ、活力に満ち、安全・安心が確保された多摩

 「活力ある都市の成熟・持続」への発想の転換を図り、「魅力にあふれ」、「活力に満ち」、災害等にも強い「安全・安心が確保」されたまちを目指すことで、住みやすく、安らげる環境が構築され、多摩地域がこれまで以上に輝きを放ち、人々を惹きつけ続けていくことが期待される。

3 3つの視点

視点1 既存資源の再評価

 これまで見過ごされていた多摩地域の既存資源を再評価したうえで、そこから新たな価値を見出し、その活用を図る。

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視点2 企業・事業者も「主役のひとり」

 企業・事業者が、これからの地域の形成・発展を担う「主役のひとり」として、その主体的な取組を通じて地域経済の振興やまちづくりなどに積極的に関わっていくことを期待。

視点3 多様な「つながり」による共生

 様々な主体が、従来の発想にとらわれず、付加価値の創出や相互補完といった観点から、多様な「つながり」を形成し、一層の効率化を図りつつ共生していく。

【進むべき方向性】

 多摩地域を取り巻く状況変化等に対応し、これからの多摩の目指すべき姿の実現に向け、重要となる方向性について、3つの視点を活かしながら大きく8つに整理した。この方向性は、中長期的視点に立って、その具体的イメージを喚起できるよう、2030年を目途とする。
 この方向性を足掛かりとして、多摩地域に関わる多様な主体が、それぞれ自発的かつ主体的に、多摩の将来を見据えた取組を推進していくことを期待する。

1 持続可能な暮らしやすいまちづくり

  • 大規模工場跡地などの活用にあたっては、地域が望むまちづくりを実現するしくみづくりを推進

  • 将来の人口減少などを見据え、都市機能の集積などが図られたまちづくりを志向

  • 高齢者や子育て世帯をはじめ、あらゆる世代が安心し充実した生活を送れる環境の整備

2 高付加価値を生み出す企業活動の促進

  • 多摩地域の技術基盤や知的資源を活用し、成長が期待される分野への参入を促進

  • 製品や技術の高付加価値化に向けた産学連携・産産連携の深化

  • 各種支援機関や大学、金融機関をコーディネーター役とした連携の推進や自治体による地元企業との意思疎通と企業誘致の促進

3 地域資源を活かした産業の活性化

  • 地域に眠る観光資源や見逃されている地域特性を活かした魅力ある観光の確立と連携による回遊性の向上

  • 特産物のブランド化や事業の多角的展開等を通じた高付加価値を生む農林水産業の推進

  • 地域の多様な人材を担い手とした、新たな事業の展開

4 地域を支える交通インフラの整備

  • 多摩地域の今後の発展を支える交通ネットワークの更なる充実

  • リニア新駅の開業や横田基地の軍民共用化等をきっかけとした地域の発展

5 災害に強いまちづくり

  • 東日本大震災の教訓を踏まえ、建築物の耐震化や地域での自助・共助のしくみづくりなど震災対策を着実に展開

  • 老朽化が進行する都市インフラについて、将来の社会情勢等を見据え、必要な整備・更新などを計画的・効率的に推進

  • 台風や局地的集中豪雨等に対する水害対策や土砂災害対策の推進、防災に寄与する道路ネットワークの形成

6 低炭素で自立分散型エネルギーのまちづくり

  • まちごとにエネルギーの創出と活用を目指す「スマートシティ」のモデルを構築

  • 省エネルギーの促進、再生可能エネルギーの利用拡大により、低炭素型のまちづくりを推進

  • 自立分散型エネルギーの普及による「エネルギーの地産地消」の実現

7 豊かな自然の保全と活用

  • 多様な担い手が多摩地域の自然の保全・再生に向けた取組を推進していくしくみを構築

  • 森林等での体験・滞在型ツーリズムの展開など多摩の魅力ある自然を活用

  • 豊かな自然をスポーツや観光に結びつけるなど、多摩の自然環境を活かして地域の魅力を発信

8 「成熟・持続」に対応した行政サービスの展開

  • 行政サービス水準の低下の回避、安定的で質の高い行政サービスの提供に向け、自治体同士の競争から、相互に補完し合う関係へと転換

  • 施策の特性や多摩地域の利点などを活かした、都県を越えた連携や地域内にとどまらない新たな連携の構築

「新たな多摩のビジョン」 本文の構成内容

   
  1. 縮小に向かう社会
    (1)人口減少社会の到来と急激に進む高齢化
    (2)経済活動の縮小
  2. 更新需要の増大と都市化の影響
    (1)都市インフラの更新
    (2)建築物の老朽化
    (3)みどりの減少
  3. 安全・安心への脅威
  4. 自治体財政の悪化への懸念
  1. ビジョン策定の意義
  2. ビジョンを貫く考え方
    (1)基本認識
    (2)目指すべき姿
    (3)3つの視点
  1. 持続可能な暮らしやすいまちづくり
  2. 高付加価値を生み出す企業活動の促進
  3. 地域資源を活かした産業の活性化
  4. 地域を支える交通インフラの整備
  5. 災害に強いまちづくり
  6. 低炭素で自立分散型エネルギーのまちづくり
  7. 豊かな自然の保全と活用
  8. 「成熟・持続」に対応した行政サービスの展開

 『多摩の将来像2001』の取組と検証
 『新たな多摩のビジョン(素案)』に対するご意見等について

資料等

記事ID:003-001-20240718-002858