史料の解読と読み下し例~明治初期の願書を読む

出典:『大夫士伺願留・5』(明治2年)(請求番号:605.A7.14)

【史料】

明治初期の願書を読む_解読 明治初期の願書を読む_解読

解読文


賤臣当家相続被 仰付候已来清水家臣共
依頼仕候方無之艱苦悲歎罷在候処不料も
先般莫太之御扶助被下置天地覆載之
御至仁難有仕合ニ奉存候然る処家名相続之儀ハ
未タ何等被 仰出候儀も無御坐候ニ付御維新
多事之御砌柄何共奉恐入候得共右遺臣共
悲歎之体傍観難仕去ル六月中家名相続之儀
奉願候所追而何分之
御沙汰可有之旨蒙 御沙汰難有仕合奉存候
爾後遺臣共へも厚キ
御仁恵之趣説諭相加置候ニ付翹首渇望之体
一日如千秋罷在候得共日を逐月を累るに随ひ
弥増切迫之情実に而遺臣共日々弊邸へ罷越
歎訴申立何分説諭方にも当惑仕候場合ニ御坐候
畢竟右家之儀ハ賤臣一旦相続仕候末ニ有之
別而憫然之至深察罷在候段全ク私情に相渉奉
恐縮候得共何卒右之鄙衷御憐察被成下出格之
御仁恵を以名跡御立被下置候ハヽ遺臣共一同之志
願も相貫き猶更深ク
皇恩之渥を奉感戴
王事ニ勉励致候儀も相届安堵仕候様非常之
御恩裁奉仰度此段再奉懇願候已上
  八月十七日         徳川従四位
     弁官
      御中



読み下し例


賤臣当家相続仰せ付けられ候已来、清水家臣共
依頼仕り候方これ無く、艱苦悲歎罷り在り候処、料ずも
先般莫太の御扶助下され置き天地覆載の
御至仁有り難き仕合せに存じ奉り候。然る処家名相続の儀は
未た何等仰せ出でられ候儀も御坐無く候に付き、御維新
多事の御砌柄何共恐れ入り奉り候え共、右遺臣共
悲歎の体傍観仕り難く、去る六月中家名相続の儀
願い奉り候所、追而何分の
御沙汰これ有る可し之旨御沙汰蒙り有り難き仕合せ存じ奉り候。
爾後遺臣共へも厚き
御仁恵の趣き説諭相加え置き候に付き翹首渇望の体
一日千秋如く罷り在り候え共、日を逐い月を累るに随い
弥増す切迫の情実にて遺臣共日々弊邸へ罷り越し
歎訴申し立て何分説諭方にも当惑仕り候場合に御坐候。
畢竟右家の儀は賤臣一旦相続仕り候末にこれ有り
別して憫然の至り深察罷り在り候段、全く私情に相渉り
恐縮奉り候え共、何卒右の鄙衷御憐察成し下され出格の
御仁恵を以て名跡御立て下され置き候はゝ遺臣共一同の志
願も相貫き猶更深く
皇恩の渥を感戴奉り
王事に勉励致し候儀も相届き安堵仕り候様、非常の
御恩裁仰ぎ奉り度、此段再び懇願奉り候已上
  八月十七日         徳川従四位
     弁官
      御中

語句説明

  • 覆載(ふうさい)
    天が万物を覆い、地が万物を載せること。また、天地や君主の恩恵。
  • 翹首(ぎょうしゅ)
    首をあげて待ち遠しく思うこと。

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